アメリカのカリフォルニア州サンノゼで、VRヘッドマウントディスプレイを提供するOculus VRの技術カンファレンス“Oculus Connect 6”が行われた。

 ソーシャルネットワーク企業のFacebookを親会社に持ちつつも、同社がVR機器を展開していく中で重要な要素のひとつとなっているのがVR対応ゲームだ。そこでゲーム部門を統括するエグゼクティブであるジェイソン・ルービン氏とマイク・ベルドゥ氏に、今後の展望やタイトル獲得戦略について聞いた。

ジェイソン・ルービン

Naughty Dogの共同創設者で、Oculus参加後はコンテンツ部門の統括などを経て現在はFacebookのSpecial Gaming Initiativesという役職。

マイク・ベルドゥ

1980年代からゲーム業界で活躍してきたベテラン。ZyngaやEA Mobileなどの重役を経て、現在はFacebookのAR/VRコンテンツの統括をするディレクター。

QuestのPC対応は新たな選択肢

――まずはルービンさんの新しい役回りについて教えて下さい。

ルービン 私の新しい役職はスペシャル・ゲーミング・イニシアチブスというもので、基本的にはFacebookとゲームに関するすべての可能性を見ていくというものになる。

――Oculus QuestでPC向けであるRiftのタイトルも遊べるようになるOculus Linkが発表されました。これはVRゲームの分野にとってかなり大きなことだと思うのですが、戦略への影響や位置づけは。

ルービン まずはベルドゥを紹介させて欲しい。彼は自分がやっていたOculusの新しいコンテンツ統括で、この質問に答えるのに適任だ。

ベルドゥ アイデアとしては消費者にできるだけ多くの選択肢を提供するという事なんです。非常にたくさんのRift対応アプリと、とてもしっかりとしたQuestのエコシステムを考えた時に、Questを持っている人が両方の世界にアクセスできるようになったら、これはエキサイティングです。

 でも誰もがハイエンドPCを持っているわけではありません。Questに今あるしっかりとしたエコシステムとコンテンツを多くの人に満足していただきつつ、もしRift級のコンテンツを動かせるPCを持っていればRiftのソフトウェアラインナップにもアクセスできる、というものになります。

――QuestへのOculus Goアプリの対応もスタートし、QuestはGoのカジュアル寄りからRift向けのコアなハイエンドまで、最も幅広いコンテンツをカバーしうるものになります。これ自体はいいのですが、Rift Sの立場がボヤけてしまう部分もあるのでは?

ルービン Rift Sはひとつセンサーが多くて、より幅広い領域をカバーできるものだ。それとスクリーンも異なるし、構造も違ってより頭が収まりやすい作りになっている。なのでRift Sを選ぶメリットは依然としてあって、より高い忠実度を求める従来のPCユーザーなどには優れたデバイスとなる。

 そうではなくてフレキシビリティーを優先するような人は(ハイエンドPCがなくても単体動作する)Questを求めるだろうし、それでVRにハマって、PCを買ってRift向けのコンテンツもやろうという人もいるだろう。あくまでも消費者の選択なんだ。自分の好みに合わせてこういった選択を行える。

――センサーという点では、Questには2020年にハンドトラッキング機能がアップデートで実装されることが発表されました。Rift Sではどうでしょう?

ルービン それについては現時点で何も発表していない。

――ハンドトラッキング自体、かなり面白い機能です。でもゲームによっては物理的な感触や反応が欲しい場合もあると思います。

ベルドゥ その通り。だからTouchコントローラーがなくなるわけではないんです。マーク(・ザッカーバーグCEO)が基調講演で言ったように前方互換性も大事にしていきたいから、その点でもTouchは大事にしていきたい。ただ、手が加わるのは大きい追加ですね。

――“ハーフ&ハーフ”みたいな使い方はどうでしょう? 片手はTouchを握って、逆の手はフリーハンドというような事はできますか?

ベルドゥ ひとつ面白い話をすると、手をどう使うかは開発者に委ねてみて、どうクリエイティブな方法を思いつくか見ていきたいと考えているんです。(「では可能性として除外はしていない?」)はい。
(※編注:別の関係者に確認をとった所、「現在はできない」ものの同様の回答だった)

ルービン (追加のハードウェアを足すのではなく)これはソフトウェアで実現しているから、どんどんパワフルに変わっていく。Questのトラッキング機能自体、発売当時からずっと良くなっているけど、それもソフトウェアの改良でやっている。

 これはハンドトラッキングについても同様で、今日出しているデモなんかは将来から見れば“最悪”のものだよ(笑)。例えばこうやって手を重ねたりすると駄目だったりするけど、それもいつか解消できるだろう。なぜならここからどんどんアップデートで良くなっていくからね。

 だから、もし仮に開発者たちが思いもしなかったような変なやり方を必要とし始めたら、我々はそれに取り掛かっていくことになるだろう。

『メダル・オブ・オナー』に続く大型タイトルが続々登場予定

――『Asgard's Wrath』や『Stormland』といった大型のタイトルの発売日も決まりました。Respawn Entertainmentによる『メダル・オブ・オナー』のVRゲームも発表されました。もっといろいろと大型のタイトルを期待してもいいでしょうか?

北欧神話を題材にしたアクション『Asgard's Wrath』は10月10日に、Insomniac GamesによるFPS『Stormland』は11月14日に配信決定。

ベルドゥ 『メダル・オブ・オナー』はこれから目にするだろう多くのクールなハイエンド寄りのプロジェクトの最初のもので、これがこれからアナウンスされるものの前触れ、これから我々が向かう方向性を示すものだと考えて欲しいですね。Oculus StudiosはAAA(最上級の)体験を提供するトップクラスのスタジオともっと関わっていくことになります。

 でも一方で彼らと比べると小さなスタジオとも引き続きやっていくつもりです。ご存知のように、新たな領域を模索して革新的なメカニクスやプレイのあり方は往々にしてそういうスタジオから出てきますし。だから大手とインディー、どちらにも投資していくんだと思ってもらって構わないです。

――基調講演では、Oculus Storeでの売り上げが1億ドル(約107億円)を超えたという話もありました。この点についてはどう捉えていますか。

ベルドゥ これはテクノロジーとエコシステムの双方を着実に改良してきたことが結実している現れだと思います。ようやく本格的なマスマーケットになってきているなという感じですね。

ルービン あの数字にQuestが貢献している部分は大きい。直線的に伸びてきたんじゃなくて、Questの登場でグッと伸びているんだ。来年に向けてもっとたくさんのタイトルが出てくる中で、Questがまた加速してくれるんではないかと期待しているよ。

ベルドゥ Questの数字には本当に驚かされます。継続性も平均的なタイトル本数もコンソールゲーム機みたいな数字になっていてびっくりしましたね。

マーク・ザッカーバーグ氏がストアの1億ドル突破を発表。

――いろいろ発表があった中であなたがもっとも興奮しているものは?

ベルドゥ 自分の場合は、少し変かもしれないけど『Beat Saber』などの外部のスタジオが成功したという部分ですね。スタジオがうまくやっていくだけの金額を稼ぎ、100万本も突破できたというのはとてもいいことだと思います。

 それともちろん、発表した数々のゲームにも期待していますし、早く製品版を遊びたいですね。先程も言ったように、いろいろなゲームがこれからやってきます。このふたつをメタレベルで言い換えれば、エコシステムがうまく行っていること、と言えるでしょう。

ルービン これは本当に個人的なものだけど、ハンドトラッキングはとても大きくて、その可能性はこれまで見たことがないものになると思う。Oculus Linkも同様だね。

 ちょっと振り返っていいなら、Respawn Entertainmentとのパートナーシップ契約にサインした事も大きい。AAAのIP(『メダル・オブ・オナー』)で大手スタジオがVRゲームを作るという最初の事例に繋げられた。

 でもこれは“最初”であって“最後”ではないし、いずれ“最大”でもなくなるだろう。VRを本当にやりたいスタジオによる、移植でもサイドクエストでもない、メジャーなAAAのIPのVRのためのゲームの、あくまで最初の例なんだってことを覚えておいて欲しい。

 また、かつて手掛けたIPをVRで再ローンチするという例というのも面白い部分だ。1999年の初代『メダル・オブ・オナー』のスタッフもいるわけだけど、「当時はできなかったビジョンをついに実現できる」と言っていたよ。そういった所も個人的に思い入れがある。

 あのゲームは単なるシューターではなくて、彼らが仕込んでいるものを知ったら驚くだろう。時期が来たらもっと詳しい内容を発表してもらうつもりだ。

――「やりたかったことがついにできる」というのはいい兆候ですね。『Rez』にせよ『ワイプアウト』にせよ、VRで過去のIPが成功する時はそういうコメントを聞くことが多いですから。

ルービン 『Elite Dangerous』とかもそうだよね。宇宙を飛び回るのはVRがやっぱりいい。開発者がVRに入ってくるのはそういった、当時できなかったビジョンを今のVRで実現できるという部分もある。実際、自分としてもそうなんだ。

――それで、もろもろについて日本での展開を期待していいんでしょうか?

ルービン OculusはFacebookの傘下になって5年目で、Faebookはそれ以前はハードウェアをやっていない会社だった。そこからやってきけども、国際化や流通の構築の点で最高の仕事をしてきたとは言えないと思う。でもそれは変えていく。日本と日本市場にもっとしっかりと取り組んでいく、というのが自分からのメッセージだ。