2019年10月10日にアークシステムワークスより、Nintendo Switch、プレイステーション4、PC(Steam)にて配信予定のローグライクRPG『MISTOVER』。

 ダウンロード版に加え、“アークシステムワークス×MISTOVER”のコラボレーションDLCが付属する特装仕様パッケージ版の発売も決定した本作について、開発元であるKRAFTONのAIMOチームで『MISTOVER』開発総括PDを務めたJames Han氏、そして『MISTOVER』PMのLee Woo Seok氏にインタビューさせていただいた。

 ローグライクならではの溢れる緊張感、滅亡寸前の世界ならではの末期と狂気がおもしろい個性的なキャラクターたち、本気で攻略に挑んだ先に待つ達成感。『MISTOVER』の開発エピソードや魅力をお伝えしよう。

Nintendo Switch、プレイステーション4、PC(Steam)にて、2019年10月10日にダウンロード版が配信されるローグライクRPG『MISTOVER』。価格は各3000円[税抜]で、特装仕様のパッケージ版の発売も予定されている。

クラシックな名作のエッセンスもたっぷり! ローグライクジャンルのよさにこだわって作られた『MISTOVER』

Lee Woo Seok

『MISTOVER』PM

James Han

『MISTOVER』開発総括PD

――まずは、ローグライクRPG『MISTOVER』はどんなゲームになっているのか、魅力のポイントを教えてください。

Han 『MISTOVER』はローグライクジャンルのゲームですね。ローグライクジャンルは“緊張感が溢れる探索”をユーザーに提供するのが第一の目標であり、大事なポイントになります。

 その緊張感のなかでプレイヤーが“戦略的な攻略”を楽しめるように、『MISTOVER』にはRPG的な育成要素であったり、戦闘の陣形やポジションで使えるスキルが変わったりなど、そういうシステムを組み込んでいるんです。

――ローグライクにRPGの魅力をかけ合わせたということですね。Hanさんは、もともとローグライクジャンルのゲームがお好きだったのですか?

Han 個人的にも好きですし、じつは『MISTOVER』の前に手掛けた作品もローグライクのゲームだったんですよ。

――ローグライクジャンルのゲームを作るのは2作目になるのですね。『MISTOVER』には、1作目を作られた後に出てきた「もっとこういうことをできたらよかったな」というアイデアや気持ちが込められていたりするのでしょうか?

Han ありましたね。1作目はモバイル向けに制作して日本にも提供されたのですが、いい実績を残せませんでした。

 1作目がよい結果にならなかった理由は、モバイル向けにローグライクジャンルのゲームを提供したことそのものに問題があったからだと思います。

 モバイル向けのアプリは基本無料で課金制がポピュラーですが、それはローグライクジャンルの醍醐味である“自分の経験やプレイスキルを駆使して高い難易度を乗り越えていく”という魅力とは合わないんですよね。

 前作では、そこをどうにかしようといろいろ手を入れた結果モバイルアプリとしてもローグライクジャンルとしても中途半端なゲームになってしまいました。

 そこで今回の『MISTOVER』では、プラットフォームもモバイルではなく家庭用ゲーム機でリリースしようと決めて、“ローグライクジャンルのよさをしっかり作る”ことに集中したのです。

――コンソールゲーム機にリリースすると最初から決めたことで、ゲーム性をブレずに作っていけるようにした、と。

Han そうです。ですが、韓国のゲーム開発の業界では、最初から家庭用ゲーム機での発売を決めてスタートするプロジェクトというのは、ほとんどありません。そのためノウハウやアプローチを探るために家庭用のいろいろなゲームを研究しましたね。

――なるほど。私も開発中の『MISTOVER』をプレイさせていただきましたが、ローグライクなゲームシステムの軸に、クラシックRPGの『ウィザードリィ』であったり、テーブルトークRPG的なテイストであったりと、古典とも言えるクラシックRPGのエッセンスをたくさん感じました。

Han まさにそこが研究したところのひとつですね。私自身も『ウィザードリィ』がすごく好きで、昔にいっぱいプレイしたんですよ(笑)。

――やっぱり(笑)。ストーリーを伝えるテキストにはテーブルトークRPGのテイストが感じられて、それもいい雰囲気でした。

Han そうなんです。そこに関しては私よりも、開発チームで世界観を作っているスタッフと、システムを作っているスタッフがテーブルトークRPGが好きなので、そのふたりの影響ですね。

 『MISTOVER』の開発に入る前には、その世界観を担当しているスタッフが「こういうテイストのゲームにしたいんだ!」と言って10種類ぐらいのテーブルトークRPGを持ってきたことがあって、チーム全員が強制参加でそれを遊んだという出来事がありました(笑)。

――(笑)。でもその成果か、『MISTOVER』の世界やストーリーのテイストは個性のあるものになっていると思います。

Han ありがとうございます。やってよかった(笑)。

ストーリー冒頭、主人公たちが森の中で魔物に襲われる場面だが、語り口調にはテーブルトークRPGを彷彿とさせるものがある。

――世界観のお話ですと、タイトルにもあるとおり“霧(MIST)”が、物語にもダンジョンにも大きく関わりますよね。霧を扱うというアイデアは開発初期からあったのでしょうか?

Han 霧は開発初期からのコンセプトですね。霧の中にある世界であり、ダンジョンでも霧によって視界が悪い中を進んでいくというコンセプトが最初からありました。

――なるほど。開発はどんなアイデアやコンセプトで進められていったのでしょう?

Han ローグライクジャンルのゲームをコンソールゲームで出すということにあたって、最初にキーワードを設定しました。まず、“緊張感の溢れるゲームにしたい”ということ、“プレイヤーの選択が重要な意味を持つゲームにする”ということ、“新しい体験をさせる”というものです。そこに“RPG的な要素を取り入れましょう”というものが加わっていきました。

 “緊張感の溢れるゲーム”というのは、一般的なRPGにおけるダンジョン探索というのは、そこにいるモンスターを全部狩ってレベルアップするというものですが、ローグライクにおけるダンジョンというのは“ダンジョン自体がひとつの危険な存在であり、乗り越えなければならない目標”であるべきです。その緊張感を得られるに取り組みました。

 “プレイヤーの選択が重要”というのは、そんなダンジョンのなかで、プレイヤーがプレイの選択を間違えるとパーティーが全滅してしまうことが常に隣り合わせであるようにということですね。

 また、“新しい体験をさせる”というものは、緊張感と選択の重要さに慣れてしまってゲームプレイが作業になってしまわないように、いつも新しい環境や条件が現われるようにしているというものです。

 ただ、あまりに緊張感が続きすぎたり難易度が高すぎたりするのはよくないので、プレイヤーが攻略できる手段として、RPG的なレベルアップなどの育成要素を取り入れています。育成の積み重ねでも突破していけるようにしています。

――ということは、ローグライクジャンルとして歯ごたえのあるものがまずあって、RPG的な育成要素はプレイヤーがレベルアップの積み重ねでも攻略していける、いわば攻略の助けになる要素として後から入れていった、という意識だったのでしょうか?

Han その通りですね。最初は、RPG的な育成についてはすべてを入れてはいませんでした。じつは、私たちは『MISTOVER』のクローズドβテストを日本で2回行っているのですが、1回目にプレイしてもらったバージョンには育成部分がなく、ダンジョンと戦闘だけのものでした。そこでの“ローグライクのおもしろさがちゃんと出来ているか”の反応を聞いてから、育成などのRPG要素を加えていったという順番でした。

 クローズドβテストでは日本のテスターさんに、“キャラクターの設定を面白いかどうか”も見てもらいました。キャラクターの設定やデザインが面白いか、かわいいかどうか、さらにそのキャラが使うスキルがキャラの設定に合っていると感じるかどうか、ですね。

Lee 日本のユーザーさんは、“キャラクターの設定などのコンテンツの流れが自然であるかどうか”をとても重視されると感じています。こだわりがあるのですよね。そこをちゃんと検証しながら開発を進めました。2度のクローズドβテストではアンケートの質問に700問ほど答えてもらったのですよ。

『MISTOVER』では雇った調査隊員がパーティーメンバーとなり、名前や初期スキルの異なる隊員がどんどん登場するようになっている。クラスそれぞれにバックボーンのストーリーがあるが、それもちょっと変わったものばかり。

――日本のユーザーの意見もかなりリサーチして開発されたのですね。RPG的な育成の要素についてですが、たとえば、ローグライクなゲームに求められる戦略的なプレイがうまくなくても、たっぷりとレベルを上げて装備を充実させればクリアーできるようになるでしょうか?

Han 難しい質問ですが、難易度が“やさしい”であれば、じっくりとプレイすれば誰でもクリアーできると思います。

 私は、難易度が高いだけのゲームは単純にプレイヤーをいじめているだけではないかと思うのです。難易度によるおもしろさを成立させるためには“納得できるルール”が必要です。その納得できるルールの上で難易度がちゃんと作られていて、そのルールを把握して攻略に挑んでいる人であれば、クリアーできると思います。

――なるほど。高めながらも絶妙な難易度を求めているのが伺えますね。『MISTOVER』はいまの製品版に近いバージョンでもかなり手ごわいゲームになっていますが、開発途中はもっと難しいゲームだったのでしょうか?

Lee クローズドβテストでは100名ほどのテスターにプレイしてもらったのですが、用意していたプレイ範囲をクリアーできた人はいませんでした(苦笑)。その後に開発が進んでいまの製品版に近づいたバージョンで韓国でもう一度ユーザーテストをしてみたところ、3名がクリアーしていましたね。

Han 別に難しいゲームにしようと思ってはいないのですが、“賢くプレイすることが必要なゲーム”にしたいと思っているのです。たとえば、ゲーム内のアイテムも効率よく使っていかないといけない設計にしてありますね。

――私も、うっかりしたプレイでキャラクターを死なせてしまったことがありました。賢いプレイが求められるとは、そういうところですよね。

Han 残念な死にかたはいろいろ出てくると思います。たとえば、グリムリーパーには“敵と自分のHPを交換するスキル”があるのですが、開発スタッフのひとりは間違ってそのスキルを残りHPがわずかな敵に使ってしまい、HPが入れ替わってグリムローパーが瀕死になり、結局そのままグリムリーパーは死んでしまいました。そのスタッフは本当に悔しかったようで、そのスキルのことをバグ扱いして、ゲーム中からなくそうとしたのですよ(笑)。

――本当に悔しかったんですね(笑)。

Han でしょうね。でも、そういうアクシデントも全部含めてこのゲームのルールであり、魅力なのです(笑)。

死亡したキャラクターは復活しない。新たな隊員を雇うしかない。

――パーティーメンバーが瀕死になって救出や回復が間に合わず完全に死んでしまった場合は“パーマネントデス”という状態に……、つまりキャラクターが完全に消えてロストしてしまうというシステムになっていますが、本当になにも救済はないのですか?

Han ないです。

――すごく長時間のプレイを重ねてハイレベルになったキャラクターであっても、死んだら完全に消えちゃう?

Han 消えちゃいます(笑)。

――わぁ、やはりそうなんですね! まさに『ウィザードリィ』ライク。ロストの緊張感が隣り合わせの灰と青春……。

Han それに関しては開発チーム内でもディスカッションがありましたね。「復活させられる方法があってもいいのでは?」という意見もあったのですが……。このゲームのキーポイントのひとつである“緊張感の維持”のためには、キャラクターが失われる怖さがほしかったんです。だいぶ悩んだのですが復活方法は入れませんでしたね。

――『MISTOVER』というゲームのデザインにおいて非常に重要な選択ですね。

Han そうなんです。ただ、キャラクターの復活はできませんが、死んだキャラクターが装備していた装備は“呪われた装備”となって残ります。呪われた装備は通常の装備よりも性能が高いです。それを新しいキャラクターが装備して、もしそのキャラクターがまた死んでしまった場合には、その呪われた装備はさらに性能が高まります。

――それは……デメリットもやはりありますよね?

Han もちろんあります。呪われてますからね(笑)。

――やっぱり。

Han 『MISTOVER』をプレイしていくと、キャラクターの死を選択しなければならない場面も訪れると思います。「そのキャラクターを犠牲にするといいアイテムが手に入りますが、どうしますか?」というようなものです。大事なキャラクターを犠牲にすることなく自分のプレイの腕でクリアーしていくこともできますし、犠牲にして進んでいくこともできます。プレイヤーの選択には、どの選択にもメリットもデメリットがあって、それもちゃんとデザインしています。

――なるほど。いずれにしろパーティーメンバーの喪失を何度も味わうことになりそうですね……。どれぐらい育てたキャラクターをどんなプレイで失ってしまったのかっていう悲しみのエピソードが、SNSなどにたくさん出てきそうですよね(笑)。

Han ですね(笑)。

滅亡が迫る『MISTOVER』の世界には普通の人がいない? 見た目とは裏腹に個性的なキャラ揃い

キャラクターはそれぞれにクラスがある。パラディン、シャドーブレード、シスター、グリムリーパー、ロウニン、オンミョウジ、ウィッチ、ウェアウルフの8種類だ。詳しくは以下の記事をご覧いただきたい。

――雇用してパーティーに入れられるキャラクターには8つのクラスがありますよね。ヨーロッパのファンタジー的なものだけでなく、いろいろな文化のものがあって、独特だなと感じました。これはどのように決まっていったのですか?

Han 『MISTOVER』の世界観から考えていったものですね。普通のRPGではもっとスタンダードなクラスになると思いますが、『MISTOVER』の世界は“もう滅びる寸前”という危機を迎えていて、残ったわずかな人類が集まっているという状況です。生き残っているのは“いろんなところから集まった変わった人たち”です。

 しかも世界の危機という影響を受けていて、純粋に見えるキャラクターであっても闇を持っていたり、「この感じのキャラクターならふつうはこういう設定だろう」という想像を裏切るようなキャラクター設定ばかりです。

 そういう考え方でキャラクターの設定やクラスを決めていった結果、ユニークなものばかりになりました。開発チームのスタッフが好きなゲームや作品のオマージュなどもたくさん入っていますね。

――雇用できるキャラクターはたくさんいますが、すべてデフォルトで名前がついていますよね。私がプレイしていたときには“ペンドラゴン”という名前のパラディンを見かけて、「あ、某ゲームでも有名な王がいるぞ!」と思ってすぐに雇用しました(笑)。

Han まさに想像されている“それ”ですね(笑)。

――ほかの雇用キャラクターの名前もいろいろと歴史上で有名な人物を連想させるものだったりしておもしろいですね。

Han 企画を担当しているスタッフがいろんないいものや歴史的なものから選んでいますね。

キャラクターには名前がつけられているが、歴史上の著名な人物や英雄、そして神々の名前など、ゲームファンなら知っていそうな名前がついている。

――名前だけでなく、キャラクターの性格やセリフもかなり個性的ですよね。とくにシスターが怪しいというか、裏がありそうというか。見た目はかわいらしいのにちょっと怖い感じ。

Han 『MISTOVER』は世界観がダークなので、キャラクターのビジュアルは逆に明るいテイストがいいなと考えました。それにローグライクジャンルですので、自分のキャラクターたちに愛着を持ってもらうのは大事で、そのためにすぐに覚えてもらえるぐらい特徴的な設定のキャラクターになったのです。その結果、とくにシスターはすごいキャラクターになってしまいました(笑)。シスターは攻撃を受ければ受けるほど攻撃力が上がるし、ヒール量も上がるんですよ。

――ヒール量はわかりますけど攻撃力まで(笑)。バトル中のセリフも狂信的だったりして、笑顔なのに恐ろしいですね。

Lee ユーザーの皆様からは「ふつうの人がいない……!」っていう反応をいただいていますね(笑)。

回復役のシスターだが、バックストーリーを読むと聖なる存在とも言い切れない妖しさが潜んでいる。

――たしかに(笑)。パーティーキャラクターだけではなく街の人も個性的ですが、お気に入りのキャラクターや注目してほしいキャラクターはいますか?

Han ショップのNPCである“マリ”だけは専用のBGMが用意されていますね。これは開発スタッフが「いくらダークな世界だといっても、せめて買い物するときだけでも明るい雰囲気にしよう」と考えて入れたんです。

 あとは、倉庫を担当している『ボリス』というキャラクターがいますが、このキャラにはモデルがいるんです。モデルになったのは弊社のアメリカ支社のスタッフで、PAX EASTに『MISTOVER』を出展したときにサポートをしてくれた人です。そこで記念に写真を撮ったのを開発チームに見せたら、いつの間にか倉庫のNPCになってました(笑)。

――そんな裏話が。合成の施設にいる“カタリナ”も変わっていますよね。つねにぬいぐるみのような見た目のステファンを通しての腹話術でしか話してくれない。

Lee カタリナとステファンの声優さんは同じ人が担当しているのですが、カタリナのボイス収録は3分ぐらいで終わってしまいました。ステファンのセリフはたくさんあるんですけどね(笑)。