2019年9月4日~6日、パシフィコ横浜にて、日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2019が開催。4日には、“ワーママ・ワーパパたちの働き方と悩み/御社の悩みは何ですか? 他社はどう解決しているの?”と題したラウンドテーブル(意見交換会)が開催された。

 会場には、育児をしながら働くママ・パパを中心に、子育て世代の部下を抱える管理職、結婚を考えている若い女性など、いろいろな立場のゲーム業界関係者が集まった。

セガ・インタラクティブ鈴木こずえさん(写真左)とセガゲームス茂呂真由美さん(同右)。

 主催を務めるのは、みずからもワーキングマザーであるゲーム開発者のおふたり。セガゲームスの茂呂真由美さんは、コンシューマゲーム開発出身のリードプランナーで、ファミ通読者には『スペースチャンネル5』に登場するモロ星人の名前の由来にもなったデザイナーと説明したほうが早いかも!? 新卒入社ワーママとしては最年長(25年目)とのこと。小3と中3の姉妹がいる。

 セガ・インタラクティブの鈴木こずえさんは、アーケードゲーム開発のモデラーで、古くは『バーチャファイター4』から現在は『Fate/Grand Order Arcade』まで、3DCGを担当。2010年に出産、10ヵ月後に復職したが、これは所属部署の女性開発者としては初の事例だったという。現在は小3の女の子のママとして、PTA役員も務めている。

交流の輪が広がり、上司も動いた! セガサミーグループの変化

 このラウンドテーブルは2017年からスタートし、毎年開催されているもの。
1年目は「悩みの共有」
2年目はプラス「何か新しい行動をおこしてみよう!」
3年目はプラス「変化が起きたことの共有/業界に働きかけを行う一歩へ!」
がテーマとして掲げられた。

 当事者にとっては、悩みを共有する相手がいるだけで勇気づけられる、そんな場であると同時に、みずからがアクションを起こすことで働きやすい環境作りにつなげていこう、という勇気が芽生える場でもあるのだ。

 始めに、主催のおふたりから、この1年間でセガにどんな変化があったか説明が。昨年もラウンドテーブルを主催し、セガサミーグループで導入した社内共通コミュニケーションツール“Office 365 Teams”と、その中で立ち上げたワーママ・ワーパパコミュニティについての情報共有を行ったおふたり。「コミュニティ大事」という結論が導き出された。

 その後、本社が移転し、グループ会社が本社ビルに集結したことも手伝って、“Office 365 Teams”を導入するグループ会社は10社にまで拡大。そこで、口コミやイントラネットなどでワーママ・ワーパパコミュニティの存在をアピールしたところ、参加者は昨年の2倍以上、約160名にまで増えたという。

 コミュニティでは、社員食堂でのランチタイム交流会を定期的に開催。子育ての話題だけでなく、各グループ会社の社内状況の共有なども行われ、さらにメンバーからの提案で技術交流会にまで発展した。会社主催の技術交流会もあるのだが、夜の開催が多いため、子どものお迎えなどで早く帰る必要のあるスタッフには、参加しにくい面があった。「このような問題を、ランチの時間を利用して解決していきたい」と茂呂さん。じつは、このラウンドテーブルの終了後にも、希望者によるランチタイム交流会が企画されていた。

 また、セガ・インタラクティブとセガゲームスとで、在宅勤務の試験運用が開始され、おふたりとも参加中、という報告も。鈴木さんは「3Dデザイナーの在宅ワークがいちばん難しいと言われましたが、グループを挙げての働きかた改革への取り組みや、ITサポートの方々による環境構築のおかげでトライできています」と現状を説明した。

 そして、この10月、グループ3社に時短フレックス(時短勤務者へのフレックス勤務の適用)が導入されるという動きも伝えられた。これは、昨年おふたりがラウンドテーブルを主催したことがきっかけともなっている。セガ・インタラクティブの片岡本部長から杉野社長へ「こんな社員がいる」と報告が上がったのだ。すると、社長から鈴木さんのもとに「なにか協力できることがあったら言って」というメールが届き、時短フレックスの導入をお願いしてみたところ、なんと実現してしまったそう!

 この経験を踏まえて「上司と同僚の方には、働きやすい環境づくりのサポートをお願いします。ワーママ・ワーパパへは、育児しながら働きやすい環境ができないか、相談してみましょう。そしてサポートしてもらったら、アウトプットなどでのフォローを忘れずに」と、鈴木さんは呼びかけた。

働きやすい環境づくりのため、自分に何ができる? 参加者たちの宣言

 ここからは参加者による20分間のラウンドテーブルに突入。6名ずつ6つのテーブルに分かれて着席し、前半は「この1年、周りで何が変わった?」「引き続き抱えている問題点は?」「それをどう解決したい?」、後半は「この後、自分は何ができそうか?」「自社に対して、どのように働きかけを行いたいか?」について、ひとりひとりが発言するという流れとなった。

 実際にひとつのグループを覗いてみると、参加者の職業はデザイナー、ソーシャルゲームの運営、サーバの管理などバラバラ。勤務する会社も、メジャーなメーカーあり、中小企業ありとさまざまだ。そして立場も、現在育児の真っ最中という共働きのワーパパ、社内結婚して今後出産を考えている女性など、ひとそれぞれ。もちろん、抱えている問題も異なるのだが、共通しているのは「困っている」「この先困りそう」ということだった。

 グループごとにまとめられた発言は、全体に向けて発表されることに。
「周りで何が変わった?」という話題からは、在宅勤務や時間単位の有給などを採り入れる企業が少しずつ増えていることが伺えた。
「抱えている問題点は?」については、
「開発機材を持ち出せないなどの理由で在宅勤務が実現しない」
「男性は育休が取りづらい」
「責任ある仕事が任せてもらえず、キャリアアップができない」
「リーダーが早く帰ると困ってしまう」
 などなどなど、さまざまな声が。

 こうした問題を解決するために、そして働きやすい環境を作っていくために、自主的にできることとして、
「問題が解決しないのは、会社に声が届いていないからかも。要望を挙げていきたい」
「もっとチーム内でコミュニケーションを取り、理解が得られるようにしたい」
「ゲーム開発の現場でママは少数なので、パパから発信してもらうよう働きかけたい」
「リーダーの負担を減らしていきたい」
「セガでの事例を聞いて、社長が動いてくれるのはいいと思った。社長に働きかけたい」
 などのアクションが、各グループから宣言された。

 また、発表された在宅勤務の問題に対し、別のグループから「上司の話だが、やはり物を作る作業をリモートワークで行うのはなかなか難しいので、事務作業やほかの人のの書いたドキュメントを見る作業などをリモートワークで行っている」と具体的な事例が示されるなど、情報交換も活発に行われていた。

来年のCEDECまでに、ひとりひとりが新しいアクションを

 グループ発表が終わると、主催のおふたりも「今後の私たちの目標」を宣言。
「コミュニティを利用し、ワーママ・ワーパパ同士の情報共有、コミュニケーションの促進を、昨年に引き続きさらに深めていく」
「安心して長く働き続けることができる職場環境への働きかけ、構築を目指す」
「グループ会社全体でワークライフバランスを改善する」
「業界全体のワークライフバランス、意識改革につなげたい!」
 の4点を挙げた。

 おふたりは昨年のラウンドテーブル主催をきっかけに、Unity Japanによるゲーム業界で働く女性の交流イベントで講演を行ったり、複数の企業からコミュニティの立ち上げについての相談を受けたりしたという。そこで、今後も他社との連携や、社外講演の参加など、「私たちにできることで業界の発展に貢献していきたい」とも表明。

 そして「私たちひとりひとりの動きで、働きやすい職場環境を作っていきませんか。本日の経験を自社に持ち帰って共有してください。来年のCEDECまでになにか新しい1アクションをおこしましょう。きっとなにかが変わっていきます。うちの会社では私ひとりしかいないという方、もうひとりじゃないです。私たちがいます。困ったことがあったら連絡してください」と参加者に呼びかけ、ラウンドテーブルは閉会となった。

 ところで、1年目はスクウェア・エニックスの女性開発者が主催し、2年目はおふたりがバトンを受け取って開催したこのラウンドテーブル。3年目の今年は、本来なら別の会社にバトンを渡したかったものの、立候補がなかったとのこと。「来年こそ、ほかの会社の方にバトンを受け取ってほしい。ほかの会社での事例を教えてほしいです」とおふたり。このラウンドテーブルは、CEDECでの恒例化を目指し、これからも続いていく。