暗中模索の中で動き出したタニタツインスティックプロジェクトの量産モデルがついに完成!

 健康を“はかる”ことで、人々の健康作りをサポートする健康総合企業のタニタが2018年に突如、『電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機』(以下、『禁書』)対応ツインスティックのプロジェクトを始動。

 2018年6月に開始した第1弾クラウドファンディングプロジェクトは残念ながら目標金額に届かずに不成立となったが、その後に行われた第2弾、第3弾は見事、目標支援金額を達成。

 最初のクラウドファンディング開始から約1年2ヵ月が経過した2019年8月末、今年11月の第1弾の出荷に向けて開発が進められていた同ツインスティック量産モデルの最終仕様版がついに完成。東京・板橋区のタニタ本社にて、出来上がったばかりの量産モデルを前にしての、開発担当者座談会が行われた。

 座談会に参加したのは、タニタの谷田千里社長よりツインスティックプロジェクト担当に任命された久保彬子氏、同じくタニタで製品開発に携わっており、本プロジェクトでも開発・技術を担当している大場弘氏、ツインスティックの製造を担当する三和電子の齊藤邦男氏、『バーチャロン』の生みの親でもあるセガゲームスの亙重郎氏の4名。

 同座談会の模様は、タニタ公式YouTubeチャンネルにて、2019年9月9日より一般公開されている。

 その後、2019年9月12日〜15日に千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2019の三和電子ブースにて、完成したばかりのツインスティック量産モデルを一般お披露目。

こちらは東京ゲームショウ2019の三和電子ブースでツインスティックを展示していたときの様子。ブースでは、スティックの感触を確かめたり、底面を熱心に確認したりするなど、熱心に見入る来場者の姿が多く見られた。実際にクラウドファンディングの出資者の方も多数訪れたそうで、概ね好意的な意見をもらったと久保氏は語っていた。

 さらに、東京ゲームショウ2019の開催2日目となる9月13日には、セガゲームスブースのステージイベントにて、『バーチャロン』シリーズの亙重郎プロデューサーと、タニタの代表取締役社長の谷田千里氏、ツインスティックプロジェクト担当の久保彬子氏(タニタ)が登壇するステージイベントも開催。プレイステーション4用ソフト『電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001』の発売日発表とともに、大きな盛り上がりを見せていた。

いまだから話せる開発時の苦労話を披露

 量産モデルが完成した2019年8月、タニタ本社に同プロジェクトの開発担当者たちが集合し、“開発担当者座談会”が行われたのは前述の通り。この座談会の出席者に、プロジェクト始動時のエピソードやこだわりのポイントなどといったお話を聞く機会が得られたので、ここで紹介していこう。

亙 重郎

セガゲームス 『バーチャロン』シリーズプロデューサー、ツインスティック監修

齊藤邦男

三和電子 開発・設計担当

大場 弘

タニタ 開発・設計担当

久保彬子

タニタ ツインスティックプロジェクト担当

――まず最初に亙さんにお聞きしたいのですが、このプロジェクトの話を初めて聞いたときはどのように思われましたか?

あまりにも意外な話でして、最初はネタだろうって思っていました(笑)。でも、谷田社長にお会いして話を聞いてみたところ、どうやら本気らしいということがわかってきて、これは大変なことになるぞと思いましたね。

――最初のクラウドファンディングはかなり目標額が高めの設定でスタートしましたが、そのときはどう思われていましたか?

ずいぶん野心的な設定だな……とは思いました。ただ、最初の挑戦ということでどの辺りが適正なゾーンなのかわからないですし、仕方ないところではありますね。でも、最初の挑戦を失敗したあとに「2回目をやります」って話を聞いたときのほうが正直、驚きました(笑)。

――第2回、第3回のクラウドファンディングでは約3500人の支援者から、約1億3600万円もの支援額を集めました。プロジェクトの成功はどのような気持ちで受け止められましたか?

2回目のときは支援開始から約半日で目標金額を達成しましたが、これも僕にとっては驚きでした。でも、3回目はさすがに厳しいんじゃないかなと正直思っていたのですが、こちらも無事に達成してしまい、『バーチャロン』ファンの熱意としぶとさを感じましたね。

――第2回クラウドファンディング開始に合わせる形でPS4版『電脳戦機バーチャロン』3作品の発表が行われました。この移植の決定には、ツインスティックプロジェクトも影響しているのでしょうか。

じつは今回のプロジェクトが始まるより前から、『バーチャロン』を移植しようという話はあったんです。でも、いろいろな諸事情があって、この企画は立ち消えになっていました。そんなところに、弊社の社長(松原健二氏)から「やってみなさい」という指令が出て、昨年に急転直下で発表させていただくことになったわけです。

――今回、できあがってきた最終バージョンを見て、どんな印象を持たれましたか?

僕らは試作段階からずっと見続けてきているので、初めて見るようなインパクトはないですね。ようやくここまでたどり着いたという思いでいっぱいです。

――今回のプロジェクトでは金のスティックも用意されることになっていますが、こちらの試作機もこのあとに用意されるのですか?

齊藤金のツインスティックに関しては、試作機は用意しません。こちらは各パーツやペイントの仕様を現在検討しているところになりますが、すべてが揃った段階でいきなり制作に着手する形になります。

本体、レバーともに金の装飾が施された、まさに嗜好品ともいえる黄金のツインスティック。50万円という支援額が設定されていながらも、3名もの支援者が集まった。

――今度は齊藤さんにお聞きしたいのですが、ツインスティックの制作では、どのような部分に苦労されましたか?

齊藤まず最初にこのプロジェクトのお話を聞いたとき、過去に使用していたパーツや金型がすでにないという問題に直面しました。また、新たに制作するにしてもいくつか技術的に乗り越えなければならない問題が発生しており、その解決法を見つけ出すのが大変でした。それと、決まった本体サイズの中に収めつつ、業務用と同等の耐久性を維持させるという点にも苦労しましたね。

――そのような苦労を重ねてきて、量産モデルの完成に漕ぎ着けました。ずばり、こだわりのポイントを教えてください。

齊藤機能的なところで言うと、スティックの傾斜角をアーケードと同じ角度にできたことです。アーケードと同等のフィーリングできちんと操作でき、さらに捻りなどの入力にも耐えられる構造を実現できたところが、こだわりのポイントですね。また、家庭用のコントローラって、従来のものはあまりメンテナンス性は考えていないものですが、このツインスティックは長く使ってもらうというコンセプトのもと、業務用を手掛けるメーカーの製品になりますので、消耗部品の交換が簡単にできるよう、メンテナンス性もしっかりと考慮しています。

――ということは、アフターパーツの供給もしっかりと行われるということでしょうか。

齊藤もちろんです。レバーそのものやスイッチ類など、どのような形で供給をするかはまだ決まっていませんが、アフターパーツの提供はしっかりと行っていきます。

実際にスティックの根本部分を手に、メンテナンスのしやすさを説明する亙氏と齊藤氏。レバーのベースにあるスイッチ部分はスナップオンで取り付けられているため、パーツさえ入手できれば手軽に交換可能。このように、消耗部品が使われている箇所に関しては、極力簡単に交換作業が行えるようになっているとのこと。

――タニタさんがプロジェクトを始動してから約1年半が経ち、ようやく量産モデルが完成しました。いまの率直な気持ちを教えてください。

久保これまで3回のクラウドファンディングを行い、多くの方にご支援をいただいてここまで来られましたが、こうやって完成した商品を目の前にすると、すごくうれしい気持ちでいっぱいです。私はもともと営業畑の人間で、技術的な面に関しては専門外だったのですが、開発に参加してくれた大場にかなりフォローをしてもらい、なんとかここまでたどり着くことができました。

大場私がプロジェクトに参加したのは昨年の9月からですので、第2回のクラウドファンディングを始める少し前ですね。じつは、私はもともと『バーチャロン』ファンでして、このプロジェクトには個人的に支援をしているんですよ。ですので、メーカーサイドと言うより、ユーザー目線で満足いく製品作りを心掛けてきたつもりですが、それがこうして形になったのはうれしく思っています。

――この後の出荷に向けて、どのような行程・作業が行われていくのでしょうか。

久保これから最終チェックを行いながら、量産体制のスケジュールを組んでいきます。また、自らの手でツインスティックを組み立てるプランに出資された方も2名いらっしゃいますので、その日程調整も行います。

――先ほどメンテナンス性の高さをうたわれていましたが、組み立ても容易にできるのですか?

齊藤そうですね。特別な工具は使わず、一般的な家庭にある程度の工具で組み立てられるようにはしています。

手前は開発初期の頃の試作モデル。最終モデルよりも接地面積はかなり大きなものとなっていた。

――いま、ゲーム業界のムーブメントのひとつにeスポーツがあります。『バーチャロン』はeスポーツ向きのタイトルだと思いますが、今後ツインスティックを使用しての大会などを行われる予定はありますか?

そこはタニタさん次第ですね(笑)。何かおもしろいことを考えてもらって、我々も協力をさせてもらえたらと思っています。

久保弊社も三和電子さんも同じ板橋区の企業という繋がりがあるので、せっかくなら板橋区でなにか大会ができたらおもしろそうですね。でも、いまのところは支援者の皆さまに商品を届けることがいちばんの目標ですので、そのあとに機会があれば検討していきたいと思っています。

――実際に製品の出荷が始まり、購入したユーザーの声が市場に出てくると、買えなかったファンからも購入希望の声が出てくるかと思います。このような方たちに対して、何らかの施策があれば教えてください。

久保いまはまだ最初の出荷も行っていない段階ですので、何もお答えはできないのですが、そのような要望はすでに多くいただいております。まずは支援者の皆さまへ第1弾、第2弾をお届けすることを最優先に考え、そのあとに検討していければと思っています。

――ツインスティックも量産モデルが完成して、『バーチャロン』移植作の発売も決まりました。亙さんはこのあとに『バーチャロン』の新作を作りたいという思いはありますか?

いま進行中の企画はありませんが、今回のツインスティックとPS4版の『バーチャロン』が市場に出て、どのような反響をいただけるか次第でしょうね。今回の盛り上がりがひとつのきっかけになってくれればいいな……とは思っています。

従来のツインスティックはひとつのスティックにワンボタン、ワントリガーであったところ、『禁書』はスティック上にもうひとつのボタンが必要になる。そのため、開発中は新たなボタンをどこに配置するのか。3Dプリンターを用いて、数多くの試作モデルが制作され、チェックが行われていた。
こちらは、量産モデルのスティックボタン部分。最終的には、ダッシュボタンの両サイドにシーソータイプのボタンが設けられる形に落ちついている。このボタン配置であれば、旧作の『バーチャロン』シリーズをプレイする際は従来通りの指運びでプレイが楽しめ、『禁書』をプレイする際も親指をスライドするだけで追加ボタンを押すことが可能になる。

――最後に、完成を待ち侘びている支援者、『バーチャロン』ファンの方たちにメッセージをお願いします。

齊藤製品の仕様はほぼ確定しましたので、このあとは支援者のもとへ届けるべく、量産体制に入るための準備を進めていくことになります。お手元に届くまでもう少しお時間をいただきますが、楽しみにお待ちください。

大場先ほども言いましたが、私自身が支援者として、納得いくものができたと思っています。ですので、期待して待っていてください。

――ちなみに、大場さんが支援したのは1セットですか?

大場1セットです。さすがに2セットは買えませんでした(笑)。

久保こうやって完成形が出来上がってきたのを見て、いよいよフィニッシュが近づいてきたという実感が湧いてきました。これからも支援者の皆さまとSNSやイベントなどを通じて、いろいろお話をさせてもらう機会を設けたいと思っています。ツインスティックの到着までもうしばらくの時間をいただきますが、楽しみにしていてください。

今回のツインスティックはユーザー目線で作られた、珍しいパターンのプロダクトになります。その結果、かなり満足いくものができあがってきたので、到着を楽しみに待っていてもらえたらと思います。PS4版の『バーチャロン』についても期待してお待ちください。

こちらは2019年1月に米・ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) 2019に出展されたイメージモデル。
ついに完成形がお目見えしたツインスティックは、CES2019のモデルと比べると、かなりスリムにまとまっている。ここから最終調整やチェックが行われていき、いよいよ量産体制に入ることになる。
ツインスティック本体の底面には、机に固定するための大型吸盤を4個装着。本格的に固定をしたいユーザー用に、台などの取り付けに使えるホールも用意。ツインスティック本体の外寸、裏面穴の位置、重さなどの詳細な情報は、9月中のアナウンスが予定されている。

 量産モデルの最終版が完成したことで、いよいよゴールが見えてきたタニタのツインスティックプロジェクトだが、プレイステーション4版『電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001』の発売も決まり、11月末より順次、支援者の元に届けられる予定だ(※11月末の商品発送対象は、第2回クラウドファンディングの出資者。第3回クラウドファンディングの出資者は、2020年に出荷予定)。

 周辺機器としてのツインスティックは、セガゲームスが2010年7月に発売したドリームキャスト版『オラトリオ・タングラム』用の純正周辺機器として、そのほかのメーカーからは、2013年に配信された“MODEL2 COLLECTION”シリーズの『電脳戦機バーチャロン』に対応する外部周辺機器としてHORIが発売して以来、久しく市場には登場していない。

 今回のツインスティックは、インタビューで亙氏が述べていたように、『バーチャロン』ファンの熱意とユーザー目線で作られたデバイスとして誕生し、久しぶりにユーザーの手で握りしめられることになる。

 本プロジェクトは、支援者への商品出荷をもっていったんの終了となるが、市場に出た『バーチャロン』+ツインスティックが、この先どのような展開を見せてくれるのだろうか。

 eスポーツの時流にのった『バーチャロン』ゲーム大会や、新作『バーチャロン』の登場など、さらなる盛り上がりにも期待したいところだ。